はるけき きみに  ー 彼方より -

 やがて八重の家が見えてきた。
 マシューとサジットは初めて見る家だ。

 鹿島の屋敷は壮大だった、それには比べるべくもない。
 だが重厚な趣きはどこか似た雰囲気がある。侍の屋敷というものを感じた。 

「どうぞ遠慮なく滞在してくださいませね。私は紫音さまの侍女だったのです。だからお嬢様を助けてもらったあなた方には恩があるのです」

 その座敷で精いっぱいのもてなしを受けた。
 
 それに感謝しながら、
「これからのことなんだが」
 サジットと話を詰めていく。

「あの近江屋の言うことはたぶん本当だろう」
「そうだね、嘘を言っても彼にメリットはないだろうからね」
「クレイブ船長に会ったらどうするか」

 あの嵐の中の仕打ちがある、当然いい顔はできない。
 しかし・・。

「取引といこうじゃないか。彼らが欲しがっているのは通訳だ、その報酬として積み荷の相当なものをもらい受ける。そして換金するんだ。手元に金があれば、ほかの外国船に乗ることも出来るからな」
「うん、その船と交渉すれば帰国する道が見つかるかもしれないね。俺もあの船長と関わりになりたくないし、あの船に乗るのもまっぴらだ」

「それから、あの嵐に我々だけを危険にさらした理由も聞きたいだろう?」

 航海術に長けた水夫が大勢いたのだ、それなのになぜ素人の自分らをマストに登らせたのか。

「その答え次第で、仕出かしたことへの賠償も・・」
「当然だ、抜け目なく請求しようじゃないか」

 顔を見合わせてニヤリと笑った。


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