はるけき きみに  ー 彼方より -

「しかしいかんせん通訳がいない。これでは大きな取引きが出来ない、どうにも話にならんのだ」
 そう言ってから、
「話にならん・・、あ、これはダジャレではありませんがね」
 愉快そうに笑った。

「もしあなた方が通訳をしてくれるなら、船長と対面できるよう取り計らいましょう。今は船の修理で足止めを食らっておりますがね、いつ出航するかもしれないんだ。船長は通訳がいない港を見限ろうとしている。そうなる前に、ぜひ会っていただきたいのですよ」

 マシューとサジットが互いを見た。
「そうだな、とにかく俺らはあのクレイブ船長に会うべきなんだ」
「うん、そうじゃないと前に進めない。だったら任せるしかないだろうね」

「ではさっそく連絡を取ってみましょう。数日中には会えると思いますよ、私に任せてください」

 二人の同意を取ってしたり顔でうなずく。
 次には用が済んだとばかり去って行こうとする。

「・・あれが堺商人というものか」
「うん、話に聞いていた通りだね。したたかというのか」

 もう近江屋は夜の闇に紛れていた。

「まあ、それで俺たちの目的が達せられたらいいじゃないか」
「そうだ、近々船長に会えるかもしれないしね」

「さて、会ったところで何を話そうか」
「・・ただですませはしない、そうだろう」

「当然だ、まずはあの嵐の夜のことを聞くべきだな。あんな危険なマストの上になぜ俺たちを登らせたのか、をだ」
 サジットが大きくうなずいた。