はるけき きみに  ー 彼方より -

 部屋は酒のにおいに満ちていた。

 接待をする、と言っていた女がいつの間にか酔いつぶれている。

 徳利を持ってしだれかかられてもマシューとサジットは笑うだけだった。
 用心して飲もうとしない酒を、女は自分の口に入れた。
 飲み始めると驚くほど杯を重ねる。

 そして、
「私らはいいように使われているのよ」
「そうそう。言われるまま酔っ払いの接待をして文句も言えないんだから」

「客の接待だって? 酒を注ぐだけじゃないんだよ、奥の部屋でどんなことをさせられるんだか」
「いつものことさ、私らは道具にすぎないんだよ、この屋敷のね」
「そうして用済みになったら捨てられるんだ、まるでゴミのようにね」

 目がすごんでいた。
 いま接待すべき客のことは眼中にないようだ。

 マシューとサジットが互いを見た。
 あきれたように目を丸めた。

 酒のにおいがたまらず窓辺による。

 見えるのはあの日本庭園だ。
 手入れのされた松、東屋、生け垣。

 と、その向こうに人影が見えた。

 ヒゲの男が大柄な武士を案内している。

 行く手は竹が茂る裏庭だ。

 ・・え? と思った。
 そこは、間違いなく紫音が連れていかれた場所だった。


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