はるけき きみに  ー 彼方より -

 近江屋がまたパタパタと走っている。

 表座敷の濡れ縁まで来ると、
「もし、鹿島様」
 障子の中へ声をかける。

「あの異人を宴席に案内いたしました。今は女らが接待しております」

「ふむ、入れ」
 くぐもった声がする。

 鹿島は菓子を頬ばっていた。カステイラと呼ばれる西洋のものだ。
 口に入れたそれが喉につかえたらしく胸をたたいている。

「これはこれは、お背中をおさすり致しましょうか」

 鹿島がギロリとにらむ。
 茶を飲み干してから、
「お背中だと? おさすりだと? なんでもバカ丁寧に言えばいいというものではないわ、この馬鹿者が」
「あ、いや失礼いたしました」