はるけき きみに  ー 彼方より -

 近頃、堺の港に来るようになった外国の船、それに乗っている人はこんな一風変わった容貌をしているのだという。

 倒れている体を波が洗っている。満ち潮の時刻だった、このまま放っておけば間違いなくおぼれてしまう。

 体をゆすって何度か呼び掛けた。
 しかし返事はない。

 大柄な体格を見て途方にくれた。自分一人で運べる訳がない。
 誰か人を呼んでくるべきだ。

 だがその前に潮が満ちてきそうだった。
 彼の顔に何度も波が打ち寄せている。

 その両脇に手を入れた。
 引きずってでも波打ち際から離さなくては。
 しかしたっぷり水を吸った服がよけいに重くしていた。容易に動かせない。

 潮は次第に迫ってくる。
 娘は座り込んで男の上体を抱き上げた。
 頭を膝に乗せて息が出来るようにする。
 いつまでこれで持つだろうか、潮はまだ満ちてきている。
 このままだと自分もおぼれてしまうだろう。

 途方に暮れて、男の顔を、そして迫ってくる波を見ていた。