はるけき きみに  ー 彼方より -

 先ごろ、堺の街で抜刀事件があった。
 目抜き通りを闊歩する異人達は賑やかだった。大声で笑い、奇妙な発音でわめくようにしゃべり合う。
 まるでこの街が我が物であるかのようだった。

 あるとき一人の男が日本の娘に声をかけた。
 娘はこわがって逃げようとする、しかし男は手をつかんで離さない。抱きしめて口づけしようとまでした。
 彼は酒に酔っていた。

 それは人目を引いた。
 その翌日、いつものように闊歩する異人に刃が向けられた。
 男は娘の許婚だった。

「おのれ毛唐め」
 言うなり切りつけようとする。

 逃げ惑う彼らを容赦なく追いかける。
 そして流血の惨事となった。

 異人は役所に抗議した。しかし犯人は捕まらない。
 彼らに業を煮やしていた街の人々がかくまったのだ。

 結果、異人達は次々と堺を後にすることになった。
 その中に通訳も含まれていた。