はるけき きみに  ー 彼方より -

 二人は部屋を変えてから、
「お前の言うとおり、積み荷がどんな物であるのか知らぬはずはないのだ。何カ月も船旅をして来たのだからな」

「するとやはり鉄砲は船にあるのですか」
「十中八九ある。それもあの船の大きさからすると何十丁、いや何百丁かも知れないな」
「えっ、そんなに! するとそれを買い取れば儲けは計り知れないことに」

「それもそうなんだが・・」
「まだ何かありますので?」

「あの通訳だよ。二人とも達者な日本語を話していただろう」
「はい」

「使えると思わないか、これからの異国船との取引で、だ」
「はあ」

 近江屋が目を丸めた。
「そうですな、近頃この堺には通訳がいなくなってしまいましたからね」

「そうだ、外国船と商談をしようにも話が通じないことにはどうにもならんのだ」

 やって来る外国船が通訳を伴っているとは限らない。彼らは堺に言葉を訳す者が常駐していると思っているのだ。

 かつてはそんな仕事をしている異人がいた。
 しかしあの事件が起こってからこぞって帰国、または他の港に所替えをした。