はるけき きみに  ー 彼方より -

 浜辺を若い娘が歩いていた。

 一晩中吹き荒れた嵐が、今は嘘のように静まっている。
 嘘でない証拠には、たいそうな藻屑や塵が砂浜に打ち上げられていた。

 娘はシジミ取りの桶を見つけて、
「流されなくてよかったわ」

 また次の日も使うのだから、と浜辺に置いたままだったのだ。
 それが時ならぬ嵐がやって来てこの漁具が気になっていた。

 桶を手にしてふと足を止めた。
 砂浜が朝日を受けてキラキラ光っている。
 その向こうに何かがあるのが見えた。

 え? と近づいてみる。

 それは人だった。
 打ち上げられたのだろう、若い男が波に洗われて横たわっている。

 その髪に目を止めた。ひどく明るい茶色をしている。
 これは、と目を見張った。

「もし、大丈夫ですか、もし・・」
 そう言って息を止めた。
 横向きに倒れている顔は、見たこともない造形をしている。

 目は閉じているが、なんというか、彫りが深いのだ。鼻が高く目の位置は落ち込んだように窪んでいる。
 これが話に聞く、異人というものだろうか。