はるけき きみに  ー 彼方より -

 白い砂が敷き詰められている。
 それに沿って屋敷があった。

 マシューとサジットはそんな庭に通された。

 この役所の敷地に入るなり数人の男に取り囲まれた。
 手にするどい槍を持っている。
 これからの展開によっては切っ先が自分らに向くのだ。

 建物からヒゲの侍が出て来た。

「お前達はどこの国からやって来たのだ。そしてこの日本に何をしに来たのだ」
 性急に聞いてくる。
「門番の話ではオランダ船に乗っていたそうだな。では、その積み荷はいったいどんな物だ」

「船の名前はフライロート号、船長はヨーハン・クレイブです」
「積み荷は薬品や砂糖だと聞いています、しかし詳しいことはわかりません」
 マシューとサジットが交互に答える。

「ほう、達者な日本語だの。積み荷は薬や砂糖だと申すのか」
「そうです」

「その他にてっぽう、というものはないのか。筒から火が出るすさまじい武器だと聞いておるが」
「私たちは通訳をするのが仕事です。積み荷はオランダ船の所持品なので詳細は聞かされておりません」

「しかとさようか?」
「はい」 

 ・・侍は積み荷のことを聞いてきた。
 ということは、フライロート号はこの堺に着いているのか?

 マシューは考えをめぐらせた。

 だとしたらもう積み荷の商談に入っているのかもしれない。
 船長のヨーハンらがどう持ち掛けているのだろう。
 
 あのオランダ船に乗って数か月、その航海中に船の内部を見ることもあった。
 だから積み荷が薬や砂糖だけではないことを知っている。

 鉄砲。
 それはこの国の武士が渇望する画期的な武器。それを梱包した箱が並んでいるのを見てきたのだ。

 しかし今は何も言わないほうがいい、それが賢明だと思った。
 目前の侍がどんな人間でどんな立場にあるのか分からないからだ。

 一歩間違えば躊躇なく切りつけて来る。
 それが日本の侍だ、そう聞かされてきた。


           ◆  ◆  ◆