はるけき きみに  ー 彼方より -

 話し終えて関田は頭を床に擦り付けている。

 紫音はただ瞠目していた。

 初めて知った父の臨終だった。
 最後の最後まで紫音を思い、妻を思っていた。

 すさまじい煩悶の中で自ら命を絶った母。
 その香苗を安堵させてやりたい、だから私は旅に立つ。もしかしてそれにも意味があるのかもしれない。
 それはどれほど深い言葉だろう。


 軒に吊るしたシノブが風に揺れている。
 羊歯の葉が弄ばれるように右に左にしなっていた。
 それを無意識に目で追っていた。

 関田の告白は思いもよらないことだった。

 そのとき、父は・・、母は・・。
 そして残された自分は・・。

 ああ・・。
 いいしれない感情が内側から噴き出してくる。

 なにをどのように考えたらいいのか、皆目わからない。
 あまりに大きなものが頭上から降ってきた気がした。

 突然訪れた過去の真実、その前にただわなわなと震えていた。

「・・お父さま、・・お母さま」

 手をつよく握り締める。
 それは何かを掴もうとする動きに見えた。

 だが支えてくれる者はなく、ただむなしく空を切るだけだった。