はるけき きみに  ー 彼方より -

 最後の丹波の様子を、関田は語った。

 牢内で丹波は壁にもたれかかっていた。
 気力を振り絞るようにして、
『関田よ、ありのままをしゃべってくれ。あの懇親会のときのことだ。あれが私にとっても家族にとっても重大な意味を持つことになったのだからな』

 丹波は死を目前にしていた。その彼に嘘偽りを言うことは出来なかった。

『お、お許しください。自分は・・、自分は鹿島に言われるまま香苗さまに酒をお勧めしました。鹿島はふつうの酒だと言ったのですが』
『・・・・』

『そして意識がもうろうとなった香苗さまを別室に連れて行きました。鹿島に命じられて、断る術もなく・・。しかしながらそれは人間としてしてはならない大罪だったのです』
『・・・・』

『今ここで死んでお詫びしようとも、私の罪が消える訳ではありません。自分が犯した罪はとてつもなく大きいのです。地の底に落ちて八大地獄を彷徨って当然なのです』

 泣きじゃくって低頭する。
 丹波はじっとそれを見ていた。

 関田の嗚咽が小さくなるのを待つ。
 そして最後の言葉を託した。

 言い終わってから長い息をした。
 大きな仕事を果たしたようにじっと目をつぶる。

 その夜半に、丹波は帰らぬ人になった。