はるけき きみに  ー 彼方より -

 紫音に目をやる。
 彼女は困ったようにマシューを見て、そして徳三を見た。
「そんなことを言っても、この人たちはこの堺のことが全然わからないのよ」

「大丈夫だ、この道をまっすぐ行けば役所がある。そこの役人に聞けばいいんだ。だから何の心配もないんだ」

 なんの心配もない・・、少なくとも俺たちにはな。
 哂った顔がそう言っていた。

 そう言えば、このまえ紫音に告げていた。
『いつまでこの異人を家に置いておくつもりなんだ。女の一人の住まいなんだぞ』
 と。

 彼はようやく厄介払いが出来たという顔をしていた。

 かたや紫音は心配そうだった。
 それでも何もできないらしく言葉をとどめている。
 
「さあ、もう俺らは行こう」
 徳三はせかし、

「また、会える時があったらいいわね」
 紫音はマシューに言った。
「きっと会えると思っているわ。それが明日なのか、ずっと先のことなのか、私にはわからないけれど」

 徳三が舌打ちをして彼女の背を押した。

 互いの距離が空いていく。

 追いかけたい気持ちにかられた。
 紫音は波間で意識を失っていた自分を助けてくれたのだ。

 だがそれをして何になるだろう、進む道は別々なのだ。

 顔をねじるように前を向いた。