瀬田は静かに顔を上げた。
「これからお話しすることで、紫音さまのご気分が不快になることがあろうと思います。その点、重々お詫びしながら、しかし二十年前の出来事をお耳に止めていただきたく思うのです」
「言ってください。自分に関する重大なことだと思います。当の自分がなにも知らないでは済まないこと、おかしなことだと思いますから」
「まず私の本当の名前は瀬田ではありません。関田と申します。事情があって関田を縮めて瀬田と名乗っていたのです。そして若い頃は役所に務める役人でした。そのため、篠沢丹波様とも面識があったのです」
そう言って瀬田、いや関田は遠くを見る目をした。
「すべての発端はあの二十年前の『懇親会』でした。ご存じかと思いますが、あのときは夫婦同伴でという趣旨で、丹波様も奥様の香苗様を伴ってご出席になりました。それで・・」
と言って息を継いだ。
「恐縮ながら当時の私の事情を申し上げますと、老母が病みつきその治療費がかさんでおりました。それで役所に給与の前借りを申し出たのですが・・」
「これからお話しすることで、紫音さまのご気分が不快になることがあろうと思います。その点、重々お詫びしながら、しかし二十年前の出来事をお耳に止めていただきたく思うのです」
「言ってください。自分に関する重大なことだと思います。当の自分がなにも知らないでは済まないこと、おかしなことだと思いますから」
「まず私の本当の名前は瀬田ではありません。関田と申します。事情があって関田を縮めて瀬田と名乗っていたのです。そして若い頃は役所に務める役人でした。そのため、篠沢丹波様とも面識があったのです」
そう言って瀬田、いや関田は遠くを見る目をした。
「すべての発端はあの二十年前の『懇親会』でした。ご存じかと思いますが、あのときは夫婦同伴でという趣旨で、丹波様も奥様の香苗様を伴ってご出席になりました。それで・・」
と言って息を継いだ。
「恐縮ながら当時の私の事情を申し上げますと、老母が病みつきその治療費がかさんでおりました。それで役所に給与の前借りを申し出たのですが・・」

