はるけき きみに  ー 彼方より -

「このことは自分の胸に秘めてあの世まで持っていった方が、と思ったこともあります。しかしながら、丹波様のご最後の、あのご様子、あの言葉、それを知っているのは私だけなのです。その辞世のお気持ちを紫音様にお伝えすること、それが私の勤めではと判断したのです」
「じせいの、きもちですか」

 一年前、丹波が突如投獄された。
 のみならずそこで獄死した。
 急すぎる展開だった。

 死因は心の臓の発作だと告げられた。
 父は健常だった。それがなぜ? と腑に落ちなかった。

 それらの疑問が、これから明らかになるのだろうか。

 改めて瀬田を見た。
 顔にふかい苦悩が浮かんでいた。


          ◆  ◆  ◆