はるけき きみに  ー 彼方より -

 最後の山を越えると、目の前に壮大な街が見えてきた。

 霞がかかって遠くはぼやけている。
 それでもそこに暮らす人々の息吹が感じられた。

 遠くの街道を行く馬のいななきがここまで聞こえる気がした。

「さあ、ここでお別れだ。お前らは役所に行くんだからな」
 街のはずれで徳三はいきなり言った。

「南蛮船を取り締まっているお偉い人がいるそうだ。そこへ行って事情を話してみるといい。これからお前らがどうすればいいかを聞いてみろよ。ああそうだ、あのオランダ船といったか? その船のことも知っているかもしれないぞ」

 平然と告げる彼を声もなく見た。

 異国の、初めて訪れる堺という街で自分らはどう扱われるのか。想像もつかない。
 そこの役所だって? お偉い人だと?

 だが徳三に同行を求める訳にはいかない。
 
 彼は紫音を伴ってこれからある屋敷に行こうとしていた。
 たしか、川の灌漑の対策のための・・、そんなことを言っていた。