はるけき きみに  ー 彼方より -

「えっ! そ、それは」
「そうだよ、あの方のものになるのだ。今日、これからな」
 言うなり幸江の手首をつかんだ。

 番人があわてた。
「あ、あの、この妹のほうは体調を崩しておりまして。連れて行くなら姉のほうが良いかと思いますが」

「姉さんをって? そんなっ、姉さんはもうすぐ三好屋に嫁ぐのです。太一さんのお嫁さんになるのです」
「ほう、そうなのか。だったらお前が行くと言うのか」
「それは・・」

 幸江が通路を見た。
 加奈はもうすぐ厠から帰って来る頃だ。

 ぐっと唇を噛んだ。
 つぎには観念したようにうなずいた。

 かたわらの番人に、
「何も言わないでください、姉さんには。お願いだから」

 そう言うと側近に続いた。
 よろよろと、必死の思いで歩いて行った。