はるけき きみに  ー 彼方より -

 加奈は地下室で思案していた。
 誘拐されたとき、もし自分らの立場がわかれば状況が悪くなると思った。
 豪商の娘だから人質として利用される、もしくは命の危険があるのかも。
 地下室には数人の娘がいる、それに交じって目立たぬようにしていた。

 だが監禁が長引くうちに幸江の具合が悪くなった。
 咳き込んでぐったりするときがある。

 迷った末に門番に訴えた。
「もし、妹の具合が悪いのです。お医者様か薬湯をお願いしたいのですが・・」
 だが相手にされない。

 症状は改善せず、それどころか次第に悪くなっていく。
 困った末に、身の上を明かせば治療してもらえるかと思った。

「あの、父に連絡してもらえませんか。父は斉極屋徳兵衛です。この街の商人です」
 番人が目を剥いた。
 だがすぐには信じない。
 いくつかの質問をして真実だと悟った。

「斉極屋の娘だとっ!」
 番人から報告された側近も、
「ま、まさかあの中に斉極屋の娘がいたなどと。しかも姉と妹の二人だと」
 飛び上がらんばかりに驚いた。