はるけき きみに  ー 彼方より -

 鹿島が大声で怒鳴った。
「どういうことだっ、あれだけの傭兵が一発の銃で逃げ帰ってくるなどと」

「し、しかし鹿島様、いきなり狙撃されたのです。あのまま斉極屋の屋敷に踏み込んでいたら大惨事になりましょう」
 側近がとりなす。

「大惨事だと? あいつら傭兵は捨て駒だ、どうなっても構うものか。そんなことであの計画が台無しにされてなるものか」
「あの計画、でございますか?」

「わかっておろうが、あれだあれ、わしの生涯の夢なのだ」
「・・はぁ」
 気の抜けた返事をしてにらまれる。

「ああ、はい。いえ、その、わたくしには未だにピンとこないのですが、それほどかの国が良いのでございましょうか」
「そうだ。行ったことのないお前にはわかるまいがな、向こうは格別なのだ。世界の貿易船が来て貴重な物資が山のようにある。食い物はうまいし、人々は陽気で、とにかく見るものすべてが面白いのだ」

「はぁ」
「異人に誘われたときは躊躇したがな、やっぱり行ってよかったと思うのだ。おまけにあちらは年中暖かくて冬がないそうだ。わしは寒いのが嫌いでの、凍える生活は性に合わんのだ」
「さようで、ございますか」

「なんだ、その腑抜けた声は」
「あ、いえ。その、だからお言いつけ通り、向こうで住めるように資金を集めているのです」