はるけき きみに  ー 彼方より -

「ああ、ここはこんな浜だったんだな」
 壁をつたって窓に寄ってみた。
 海は凪いでキラキラと光っていた。

 意識不明でこの家に担ぎ込まれてから、始めて見る外の景色だった。

 向こうの浜で、紫音が砂を掘っている。

「それにしても彼女、美人だよね」
 サジットもそれを見ている。

「紫音って言ったっけ、彼女、ここで誰かと暮らしているのかな」
「いや、一人みたいだよ。俺が世話になってほんの数日だけど、家に同居人の気配がないし」

 ほんの小さな二間の部屋だ、家財道具にしろその雰囲気でわかる。

 夜になると戸締りをして、紫音は隣の部屋で寝ていた。
 家族がいるふうは感じられない。

「日本の女性はみんなああなのかな」
「ああって?」

「物静かな感じで、いつもニコニコわらっているんだ」
「・・・・」

「それになんだか不思議な感じがするんだな」

 なにを言い出したのかとサジットを見た。

「どう言えばいいんだろう。なぜこんな田舎の漁村に住んでいるのかな。彼女はもっと」
 と考えていたが、
「そうだ、我われの国で言うなら、マハラジャの宮殿に住んでいる姫君、そんな感じなんだよ」
「マハラジャ?」

「微笑んだ顔がすごく上品で、日本語でこれをどう言うんだろう。そうだ、高貴って言うんだったっけ。とにかくなぜこんな暮しをしているのか、そこらも不思議な気がするよ」

 マシューも同意する。
 紫音はなんとも言い難い不思議なものをまとっていた。