はるけき きみに  ー 彼方より -

 紫音の家にもう一人の異人がやって来たのは翌々日のことだった。

 彼は入るなり寝ているマシューを見て、

「Oh Matthew, are you ok?」
 とび込むように駆け寄った。

「No problem. but I can‘t get up」

 その返事にうなずいた後で、

「・・その、申し訳ないんだが、日本語でいいかい?」
 照れくさそうに頭をかいた。

「俺は英語は苦手なんだよ。日本語の方がまだよくわかるんだ」

 マシューがわらった。
「You need to study English. If you want to work 」

「そ、そりゃそうなんだけどさ、俺は英語は母国語じゃないんだ」
 照れたように目を丸めた。

 マシューは傍らにいる紫音を見た。
 彼女は何もわからないように唖然としている。

「紫音、彼はサジットという名前だ。いっしょに船に乗っていて」
 と言っていったん切った。次に苦笑を浮かべると、
「いっしょに海に落ちた仲間だ」

 サジットはケラケラ笑っている。
 そのときの恐怖を忘れたかのような愉快な声を立てていた。