「仕方ないわね、路線変更するわ」
「な!? 鬼殺しって、全部回避できれば後手が有利になるはずだろう!」
「残念。これは新・鬼殺しよ」
「新ってなんだー!」
「勉強不足ね」
オーッホッホッと高笑いをしてみせる。
よし、ここからは力勝負。油断しなければ負けないはず。
「き……君は素晴らしいな。さぞ努力したんだろう」
「それほどでもないわ」
突然褒められた。なんなの?
確かに努力はしてきた。お風呂の中でも小さなマイノートをジップロックに入れて将棋の勉強をしていた。学校の帰り道でも、友人とバイバイしてからは勉強しながら歩いて電柱に激突したこともある。
「そんな君は輝いているよ」
「や、やめて。安っぽい口説き文句なんて」
こいつ、転生者のくせに歯の浮いた台詞を吐けるなんて、おかしいんじゃないの!? そんな奴実際いたらドン引きよ?
いえ、自分のイケメン具合を知ったうえで私の反応を見て、動揺させる方針に切り替えたのね。くっ……、やるわね!
「今から宣言しよう! 私はこの対局が終わったら君に結婚を申し込む」
えー!
ま、待って。断れるわけないじゃない。うちは貧乏貴族なのよ。家族のためにも断るなんて選択はないし。それに、結婚したら多少はまともな棋力の人と一緒にいられるわけで、えーと、そうね、志はきっと一緒よね。普及活動はきっと私の思うがままにできるはずで、えっとえっと――、
「残り一分です」
えー!
嘘でしょー!
記録係の子が残り時間を読み上げる。
えっと、あーなってこーなって!
あー! 詰み損なったー!!!
「頓死ね……負けました」
「ああ、楽しかったよ」
心理戦で完全に負けたわ。
「あらためて申し込もう。レベッカ嬢、私と結婚してほしい」
おとなしく「はい」と頬染めて頷く私だと思うの? あなたを鬼殺しでハメようとした女が。
「アルマート様、将棋に必要なのはなんだと思います?」
「え。そうだな……決して倒れない不屈の心か」
「いいえ。将棋に必要なのは世界平和よ!」
「世界……平和……?」
そんな間抜けな顔をしないでよ。
「平和でなければ将棋をする余裕なんてなくなるわ」
「そ、そうだな……」
「まだあるわ」
「な、なんだ」
「宇宙への進出よ」
「宇宙ー!?」
「人工衛星がなければインターネットを開発できないしネット対戦すらできないじゃない。AI開発のためにも、まずは義務教育も充実させないといけないわ」
感動した様子のアルマート様に手で促され、やぐらのようなところから降り、手を繋ぐ。私たちは将棋によって深いところで結ばれたようだ。
「皆、聞いてくれ! 私たちは結婚する。そしてこれより将棋のため、この国だけでなく世界中の平和を目指すことにした! 最高の国、いや世界を築きあげてみせるぞ!」
将棋! 将棋! 将棋!
鳴り止まない将棋コール。
私たちは大きな将棋盤を背に、将来を誓い合った。
――将棋は世界を救う。
その一歩は、ここから始まった。
「な!? 鬼殺しって、全部回避できれば後手が有利になるはずだろう!」
「残念。これは新・鬼殺しよ」
「新ってなんだー!」
「勉強不足ね」
オーッホッホッと高笑いをしてみせる。
よし、ここからは力勝負。油断しなければ負けないはず。
「き……君は素晴らしいな。さぞ努力したんだろう」
「それほどでもないわ」
突然褒められた。なんなの?
確かに努力はしてきた。お風呂の中でも小さなマイノートをジップロックに入れて将棋の勉強をしていた。学校の帰り道でも、友人とバイバイしてからは勉強しながら歩いて電柱に激突したこともある。
「そんな君は輝いているよ」
「や、やめて。安っぽい口説き文句なんて」
こいつ、転生者のくせに歯の浮いた台詞を吐けるなんて、おかしいんじゃないの!? そんな奴実際いたらドン引きよ?
いえ、自分のイケメン具合を知ったうえで私の反応を見て、動揺させる方針に切り替えたのね。くっ……、やるわね!
「今から宣言しよう! 私はこの対局が終わったら君に結婚を申し込む」
えー!
ま、待って。断れるわけないじゃない。うちは貧乏貴族なのよ。家族のためにも断るなんて選択はないし。それに、結婚したら多少はまともな棋力の人と一緒にいられるわけで、えーと、そうね、志はきっと一緒よね。普及活動はきっと私の思うがままにできるはずで、えっとえっと――、
「残り一分です」
えー!
嘘でしょー!
記録係の子が残り時間を読み上げる。
えっと、あーなってこーなって!
あー! 詰み損なったー!!!
「頓死ね……負けました」
「ああ、楽しかったよ」
心理戦で完全に負けたわ。
「あらためて申し込もう。レベッカ嬢、私と結婚してほしい」
おとなしく「はい」と頬染めて頷く私だと思うの? あなたを鬼殺しでハメようとした女が。
「アルマート様、将棋に必要なのはなんだと思います?」
「え。そうだな……決して倒れない不屈の心か」
「いいえ。将棋に必要なのは世界平和よ!」
「世界……平和……?」
そんな間抜けな顔をしないでよ。
「平和でなければ将棋をする余裕なんてなくなるわ」
「そ、そうだな……」
「まだあるわ」
「な、なんだ」
「宇宙への進出よ」
「宇宙ー!?」
「人工衛星がなければインターネットを開発できないしネット対戦すらできないじゃない。AI開発のためにも、まずは義務教育も充実させないといけないわ」
感動した様子のアルマート様に手で促され、やぐらのようなところから降り、手を繋ぐ。私たちは将棋によって深いところで結ばれたようだ。
「皆、聞いてくれ! 私たちは結婚する。そしてこれより将棋のため、この国だけでなく世界中の平和を目指すことにした! 最高の国、いや世界を築きあげてみせるぞ!」
将棋! 将棋! 将棋!
鳴り止まない将棋コール。
私たちは大きな将棋盤を背に、将来を誓い合った。
――将棋は世界を救う。
その一歩は、ここから始まった。



