軽音部の活動が停滞していた。
本来なら、もう次のライブの予定を決めているはずだった。
でも、真琴は動けずにいた。ライブハウスに行きづらい。遼に会いに行くのもためらっている。
何かしなきゃって分かってるのに、どうしたらいいか分からない。
気づけば、バンドのメンバーもあまりライブの話をしなくなっていた。
空回りするのが怖くて、真琴も話題を避けるようになっていた。
そんなある日、練習後の部室で、詩音が軽い調子で声をかけてきた。
「ねぇ真琴、今度さ、歌謡ショーの伴奏やってくんない?」
「……は?」
ドラムを調整していた手を止め、顔を上げる。
「ほら、私、たまに老人ホームで歌ったりしてるじゃん? いつもはカラオケなんだけど、たまには生伴奏でやりたいなーって思ってさ」
詩音の口調は軽い。
「……待って。老人ホーム?」
「ライブやりたいけど、今は色々あるじゃん? でも、音楽そのものは続けなきゃダメじゃん?」
「……」
「だったら、ボランティアでもいいから、人前で演奏しよ?」
詩音は、軽い口調のまま続けた。
「そうそう、辻村先生にも話したんだけどさ、ご老人たちって生演奏を聴ける機会がほとんどないんだって」
「……まぁ、確かに」
「だから、"それは絶対喜ぶぞ" って先生も大賛成だったんだよねー」
「へぇ……」
「もしこれが没になったら、先生もちょっと残念がるかも?」
「……」
詩音はニヤリと微笑む。
ボランティアで伴奏。それ自体は悪くない。
むしろ、音楽に触れる機会ができるのはいいことのはずだ。
でも、何かが引っかかった。
「ね、やってくれるでしょ?」
詩音は軽いノリを崩さない。
「……仕方ないな」
ため息をつきながらも、断ることはしなかった。
「じゃ、決まり!」
詩音は満足そうに笑った。
◇◇
「4人でやるんだから、当然この2人にもお願いするね!」
詩音は、当然のように樹里と早紀に声をかけた。
「老人ホームでの歌謡ショーの伴奏? それはいいことね」
早紀はすぐに賛成した。
「音楽で人を楽しませられるなら、素敵なことだと思うわ」
「おっ、さすが早紀! じゃあ決まりだね」
詩音は満足そうに笑い、次に樹里を見た。
「……おいおい、ウチの返事も聞けよ」
「え? もちろんやるでしょ?」
詩音は悪びれる様子もなく言う。
「はぁ? いや、そういう問題じゃなくてさ……」
樹里は詩音をじっと見つめた。
「お前、何か企んでんだろ?」
「えっ、なんのこと~?」
「その顔、何かあるときの顔」
「気のせいじゃない?」
「……ま、いいけど」
樹里は軽く息を吐くと、肩をすくめた。
「なんとなく、面白いことが起こりそうな気はするし」
「やっぱり、樹里は話が早いね!」
詩音は軽くウインクして、準備に取り掛かった。
◇◇
詩音は、演奏曲目のリストと楽譜をすでに用意していた。
「結構あるな……」
真琴は、並べられた楽譜をめくりながら呟いた。
「まぁ、難しい曲はないけどさ……」
「曲数が多いのが問題よね」
早紀が冷静に分析する。
「でも、演奏を聴いてくれる人たちが楽しみにしてるなら、それに応えたいわ」
「うんうん、そういうこと!」
詩音は満足げに頷いた。
練習は順調に進んだが、予想以上に準備は大変だった。
普段はやらないジャンルの曲もあり、バンドメンバーは戸惑うこともあったが、詩音のリードでなんとか形になっていった。
本来なら、もう次のライブの予定を決めているはずだった。
でも、真琴は動けずにいた。ライブハウスに行きづらい。遼に会いに行くのもためらっている。
何かしなきゃって分かってるのに、どうしたらいいか分からない。
気づけば、バンドのメンバーもあまりライブの話をしなくなっていた。
空回りするのが怖くて、真琴も話題を避けるようになっていた。
そんなある日、練習後の部室で、詩音が軽い調子で声をかけてきた。
「ねぇ真琴、今度さ、歌謡ショーの伴奏やってくんない?」
「……は?」
ドラムを調整していた手を止め、顔を上げる。
「ほら、私、たまに老人ホームで歌ったりしてるじゃん? いつもはカラオケなんだけど、たまには生伴奏でやりたいなーって思ってさ」
詩音の口調は軽い。
「……待って。老人ホーム?」
「ライブやりたいけど、今は色々あるじゃん? でも、音楽そのものは続けなきゃダメじゃん?」
「……」
「だったら、ボランティアでもいいから、人前で演奏しよ?」
詩音は、軽い口調のまま続けた。
「そうそう、辻村先生にも話したんだけどさ、ご老人たちって生演奏を聴ける機会がほとんどないんだって」
「……まぁ、確かに」
「だから、"それは絶対喜ぶぞ" って先生も大賛成だったんだよねー」
「へぇ……」
「もしこれが没になったら、先生もちょっと残念がるかも?」
「……」
詩音はニヤリと微笑む。
ボランティアで伴奏。それ自体は悪くない。
むしろ、音楽に触れる機会ができるのはいいことのはずだ。
でも、何かが引っかかった。
「ね、やってくれるでしょ?」
詩音は軽いノリを崩さない。
「……仕方ないな」
ため息をつきながらも、断ることはしなかった。
「じゃ、決まり!」
詩音は満足そうに笑った。
◇◇
「4人でやるんだから、当然この2人にもお願いするね!」
詩音は、当然のように樹里と早紀に声をかけた。
「老人ホームでの歌謡ショーの伴奏? それはいいことね」
早紀はすぐに賛成した。
「音楽で人を楽しませられるなら、素敵なことだと思うわ」
「おっ、さすが早紀! じゃあ決まりだね」
詩音は満足そうに笑い、次に樹里を見た。
「……おいおい、ウチの返事も聞けよ」
「え? もちろんやるでしょ?」
詩音は悪びれる様子もなく言う。
「はぁ? いや、そういう問題じゃなくてさ……」
樹里は詩音をじっと見つめた。
「お前、何か企んでんだろ?」
「えっ、なんのこと~?」
「その顔、何かあるときの顔」
「気のせいじゃない?」
「……ま、いいけど」
樹里は軽く息を吐くと、肩をすくめた。
「なんとなく、面白いことが起こりそうな気はするし」
「やっぱり、樹里は話が早いね!」
詩音は軽くウインクして、準備に取り掛かった。
◇◇
詩音は、演奏曲目のリストと楽譜をすでに用意していた。
「結構あるな……」
真琴は、並べられた楽譜をめくりながら呟いた。
「まぁ、難しい曲はないけどさ……」
「曲数が多いのが問題よね」
早紀が冷静に分析する。
「でも、演奏を聴いてくれる人たちが楽しみにしてるなら、それに応えたいわ」
「うんうん、そういうこと!」
詩音は満足げに頷いた。
練習は順調に進んだが、予想以上に準備は大変だった。
普段はやらないジャンルの曲もあり、バンドメンバーは戸惑うこともあったが、詩音のリードでなんとか形になっていった。



