「りーん」

背後から私を呼ぶ声が聞こえてきて、振り向くとそこにはちょうど俊が居た。

「俺にバレンタインないのー??」

俊が少しきょとん、としたようにそう言ってきた。これ、絶対に今渡さないといけないやつだよね。

「あ、あるよ」

私は不安に思いながらも、俊にクッキーを渡した。

「あの、私、お菓子に意味とかあるの知らなくて...」

次に言う言葉が出てこない。でも、私が言葉を探しているうちに、俊が口を開いた。

「え?いや、意味なんて関係ないっしょ!」

俊は、笑みをこぼしながら明るい声でそう言ってきた。

「意味とかより気持ち。ていうか、これ手作り?美味そう!」

私が作ったクッキーを見て、嬉しそうにしていた。

意味なんて、関係ない。俊はそう言ってくれた。

あぁ、そうだ。私は、俊のこういうところに惹かれて好きになったんだ。

「...ホワイトデー、待ってる」

「おう、凛が好きなチョコマシュマロ作ってやるからな!」

今年のバレンタインデーは、いつもより特別で、チョコのように甘い気がした。