人気バンドの紅一点?!~天然美女は溺愛される~

「話し終わったよー」
リビングの扉からネイとコウが入ってくる。
コウはドリンクが並べてあるミニテーブルの横に行ってセイと話し出す。
ネイは、目が合った瞬間嬉しそうに頬を緩めて近づいてきた。
どうしたんだろ・・・嬉しいコトでもあったんだろうか。
「ユキ・・・あ、美味しそ」
「つまみ食いは駄目だからね」
後ろから抱きつかれ、実家のゴールデンレトリーバーを思い出す。
よくのしかかってこられたもんだ。
「乾杯だけして、みんなでなんか遊んどいて。私はコレ作り次第合流する」
「・・・わかった。じゃあもう乾杯しよ」
「ん」
ネイがすぐに乾杯するよー、と2人に声を掛ける。
みんなでテレビの前のミニテーブルを囲み、自然と正座をする。
みんなを見渡した、リーダーのネイが自分のコップを持った。
「一番大切な大舞台がまだ残ってるけど、とりあえず今年もお疲れ様!乾杯!」
「「「かんぱーい!」」」
テンション高め。
みんな一口ずつ飲んで、コップを置いた。
「ダウトしよーぜ!」
「いーね、僕の嘘を見抜けると思わないでよ」
「じゃあ最初に上がった人がユキのトコ行けるってコトで」
「ってかダウトって1人上がったら次の人が上がるまでめっちゃ時間かかんねぇ?俺んち、家族でやっても1人抜けて誰も抜けないからあきらめて終わってる」
「それはわかる。じゃあ1人しかユキのトコ行けないんだ」
楽しそう・・・早く作ってみんなと遊びたいな。
「楽しんでー」
声を掛けてキッチンに戻る。
まだ朝ご飯を食べたばっかりなので、パスタを茹でたりはしない。
リゾットもね。
みんなを観察しながら準備を進めていると、みんながお互いの嘘を全然見抜けていないコトが分かった。
あ、これ嘘ついてるなって思っても誰も気づかないし。
コウはともかく、ネイとセイは仲が深いはずだ。
私の1つ上のお兄ちゃんと、コウは幼馴染。
そういうコトもあって、私は小さいころからコウと仲が良かった。
一緒に遊んでくれる優しいお兄ちゃん、みたいな存在だったな。
それで、高校で別れて、ネイとセイに出会ったんだ。
コウとは前々から『いつかバンドを組みたいね』って言っていたから、ネイとセイと出会ってすぐにコウに連絡したんだ。
それで3人は、顔は合わせずメッセージでのやり取りだけをして、奇跡的に大学で一緒になって、バンドをすぐに組んだんだ。
それから一年、ライブハウスやSNSで発信し続けたら、デビュー出来たから・・・ホントに、奇跡ってあるんだなって思う。
・・・まぁ、話はズレたけどネイとセイは中学生から一緒らしいから嘘は分かると思うんだけどなぁ・・・。
手を切らないようにする程度にみんなを見つめる。
あ、またコウ嘘ついた。
・・・え、みんな『ダウト』言わないの?
どう考えても嘘なのに・・・。
『4』とか言いながら多分、『9』とか出してるんだと思う。
細かい数字は分からないけど・・・計算すると、コウに『9』が来る確率はほとんどないから『9』を捨てたんじゃないかな・・・。
あ、ネイもセイも、ポーカーフェイスを保つのに集中しすぎてコウの手札があと1枚なのに気づいてない・・・。
運よく最後の1枚がちょうど回ってくる確率なんてほとんどないんだから・・・残りの持ち札枚数を考えないと。