「俺から行くわ」
皿を片付け、セイが座りなおす。
「最近、ライブでも歌番組でもコウからユキへの絡みが多くないか?」
「そう?まぁ、俺とユキはファンからも人気な組み合わせだし、みんな喜んでくれてると思ってるんだけど・・・」
「もちろん、喜んでるファンはたくさんいる。でも、その・・・なぁ?ちょっとアレ(●●)な扉を開けたファンのコトも考えないとだろ?たまにやるコウとネイの絡みも人気だし。俺はドラムだから絡みにくいだろうけど、ネイのほうにもう少し行ってほしい」
「そっか・・・そうだね、ユキと絡んだらいつも歓声が大ききなるからそっちに集中しすぎちゃった。じゃあネイとも仲いいの見せつけないと」
・・・まぁ、吐き出し会だ。
憧れの先輩バンドもやってるらしい。
半年に1回、全部吐き出す。
それが、グループ内での決まりだ。
前回はネイとセイで殴り合いになって顔に傷を作って・・・次の日、歌番組だったから、シウさんを怒らせてしまった。
それが怖かったからもう暴力は無しで、ってなるんだけど。
まぁ幸い、2人の中に亀裂が入るコトはなく、むしろスッキリしたような・・・前より仲良くなってたので、効果はあるんだと思う。
「ユキは?」
「ん-・・・絡みが多いのは確かにそうだけど私はノールックでいけるし、調整されたらそれはそれでいいよ。それにデュオもあるし、練習も過激じゃないしね」
「そっか、じゃあユキへの絡みを中心にネイも構っていけばいいんだね?」
「・・・」
「・・・ネイ?」
ずっと黙ったままのネイに、見かねたコウが声を掛ける。
「・・・」
コウの声に気づいていないのか、ネイはぼーっと下を向いていた。
どうしたんだろ・・・。
「ネイ?」
「っあ、ぇ・・・ごめ、」
「謝んないで。どしたの?」
「いや・・・なんか苦しいっていうか・・・」
苦しい?変なものでも食べたかな・・・?
「賞味期限らへんは気を付けてるけど・・・ネイってアレルギーあったっけ?」
「ない・・・そういう苦しいじゃない気がする・・・」
えぇ・・・確かに食あたりじゃなさそう。
「どんな感じ?どっか痛い?」
セイがネイの背中をさする。
「大丈夫か・・・?」
「ん・・・胸らへんが痛いような・・・締め付けられる感じ・・・」
「動悸は?」
「ん-ん」
胸が締め付けられる、か・・・えっと・・・。
「久しぶりに持久走したとき、みたいな?」
「ユキ、例えが独特だね・・・」
コウが呟き、セイもネイの顔を覗き込みながら頷いた。
「でもそうかも・・・苦しい・・・」
「歌合戦は・・・」