人気バンドの紅一点?!~天然美女は溺愛される~

そう考えたとき、大好きな憧れバンド・Blizzard(ブリザード)さんの言葉が浮かんだ。

『世間に受け入れられないなら、受け入れてもらえるまで発信し続けるしかないと思うね』

ボーカルの(おと)さんは、ちょっとした悩みを相談した私にそう言って微笑んでくれたっけ。
いつも、太陽や月みたいな輝きというよりかは星みたいな、ほんのり温かい言葉と笑顔で髪を撫でてくれる。
その手に憧れて、私はその悩みも乗り越えて今ここにいるんだけど。
「・・・やりたい。私、コウとデュオやりたい!」
「え・・・いいの⁉キーボード歌いながらな上に次の歌詞考えながらノールックで演奏しなきゃいけないけど・・・」
さっき言っていたことと矛盾しているコウのその言葉は、決して私からデュオを遠ざけようとしているわけではないのが伝わってくる。                                                   
きっと私は、自分が気づいていないところで、たくさんみんなに心配かけてるんだろうなぁ。
最年少とか、そういうの関係なくすごく過保護に成長させてもらってるのも、感謝しかない。
「大丈夫!自分でやるって決めたからには絶対妥協は許せないから・・・!」
「・・・っふふ、ユキらしいね。じゃあ頑張ろうか。もうすぐ新曲リリースだから、もう作り始めちゃってもいいと思う。MV(ミュージックビデオ)が出来るかどうかは分からないけど」
コウが少し残念そうにつぶやくから、少し考えてからフォローをしておく。
「曲の雰囲気によっては手書きの歌詞と、背景はぼやけた暗い色にするのもいいんじゃないかな?だったら文字は白がいいから、細い線で・・・。自分が歌うトコロを自分で書こうよ。一緒に歌うところは1フレーズずつ?」
「あ・・・いいね、それ!紺色とか・・・あ、ARTEMISにちなんだ感じにしてもいいかも。紺色の夜空にして、月と星を少しぼやけさせてさ。ピントは白い歌詞に合わせれば雰囲気でそうじゃない?」
「そうしよう!無理にMV作るよりそっちの方が私は好み!」
最後の押しをすると、コウも想像したのか満足したように笑顔になった。
「じゃあそのMV(ミュージックビデオ)のイメージで行くと曲調は・・・」
忙しいので、車の中で出来るだけ話を進めようとスマホを取り出すと。
「おい、・・・俺らのコト忘れてるだろ」
ネイが不貞腐れたようにセイに寄りかかっていた。
だらーっと足を伸ばして唇を尖らせ、そっぽを向く。