「今日さ、秋聖、部活のイベントの話し合いしたいから同じ部活の役割の妃奈乃と恋春も、生徒活動室に来てだって。ほら、文化祭のやつ。うちらバレーボール部も男女混合でイベント企画するらしくてさ。他のみんなは文化祭のことマジメに考えてくれないらしくて、私たちに頼みたいんだって。なんの模擬店やるか。」
妃奈乃が言う、『秋聖』とは妃奈乃と幼なじみの、男子、新田秋聖(にったしゅうせい)くん。私とも、いちおう、幼なじみ。だと思う。私の・・・・悩みのタネ。なんでって・・・
妃奈乃とは、幼稚園からの付き合いで、小学五年生くらいのときに友達だよって秋聖くんを紹介してもらった。
きっと、そのときから妃奈乃は秋聖くんが好きだったと思う。
いつもふたりとも仲良しだったし楽しそうで。
だから、私はなるべくふたりの邪魔にならないようにしてきた。
でも、妃奈乃は、三人で仲良くしようねって、やさしく言ってくれた。
・・・・でも、私は、妃奈乃が秋聖くんのことを好きって知ってるんだ。
いつも助けてもらったらすごく嬉しそうにしてるし、お互い、好きって感じがあふれてる。
もう、他のクラスメートの中だったらふたりは立派なカップルとして扱われてる。
妃奈乃は違うよって否定する。でも嬉しそうだった。
長年見てたら、わかる。親友が誰のことを好きかっていうくらい。
「うん、知ってる。」
「え?知ってるの?」
あ・・・
私は、今朝、メールで秋聖くんに教えてもらったんだけど、私はまだ妃奈乃に秋聖くんと連絡先を交換したことを教えてない。連絡先を交換したのは、二年くらい前。
妃奈乃が秋聖くんのことを好きだってわかってるからそのぶん、気まずくて。
「え?どういうこと?」
あ、もう口が滑った・・・
どうやって話そうかと考えていたら、ドアが開いた。
何気なくドアの方を見たら高校の最寄り駅。
「あ、妃奈乃!もうついたよ!」
私が、通勤客を押しのけてドアの方に向かいながら言うと、妃奈乃も慌てて後を追ってきた。
何とか誤魔化せた。私が、秋聖くんのことが好きなのは、妃奈乃も気づいていない。