天秤

「ごめん、妃奈乃・・・ごめん・・・」
私は震える声で謝った。
私は、わかってた。わかってたんだよ。妃奈乃が、秋聖くんのことが好きってこと。
だから、私は自分のほのかな恋心を押し隠してまで努力してきた。
それがいけなかったの？
秋聖くんは、どうしてあんなことを言ったの？
周りには、甲高い笑い声が響いている。
楽しそうだ。でも・・・私がこの状況を作り出してしまった。
全部私のせい。
そう思うと胸が苦しくなる。
「妃奈乃ごめん、私、そんなつもり・・・なかったの。」
鼻の奥がツンとした。なぜか泣きたくなる。
「ううん・・・恋春は悪くないよ。悪くない・・・・！私が、私がっ・・・いけないんだよ。ああ、でも、好きになって欲しかったな・・・でも、秋聖はどうして・・・」
妃奈乃を乙葉と私で慰める。
「ごめんね・・・・」
それで何度も謝った。
秋聖くんは、妃奈乃が嫌いなの？
こんな私より・・・妃奈乃を好きになって欲しい。
そう思っているはずなのに、なぜか、胸が締め付けられるように痛かった。