わけありくんを護ります



「もちっとスカート短いといいのになぁ」
「お前声かけてみろよっ」
「はずいって!」


電車とバスとはまた違う──
興味津々と言いたげな視線、

マジ?と目を輝かせてくる視線、

ただガン飛ばしてくる視線……

さまざまな目に気にせず、臆せず私は真っ直ぐに教室へと歩いた。


2─B……
私が教室に足を踏み入れた途端、ばか騒ぎしていたヤンキー達が嘘みたいに静まった。

……何か起きるのか、と足を引っ込めそうになったけど自身の躊躇(ためら)いを無視してずかずかと入っていく。

そして、薄汚れたままの黒板の前に立ち、黄色のチョークでど真ん中にデカデカと、

【芝桜 凛】と書いた。


「芝桜 凛です。どうぞ宜しく」

首だけをさげた会釈をしたけど、ヤンキーくん達からは何の返事はない。

……でしょうね。別にいいけどさ。

不良相手にも挨拶は一応済ませた、これで後は座るだけ──って席どこ?

でも聞くのは絶対に嫌。
見渡して判断しようとしても、机も教室も落書きだらけで……?


あれは……

一つだけハートの風船が付けられた机が目に入り、とりあえず間を抜けてそこにいけば、

【WELCAME 祝 転校生ちゃん♡LOVE 】

と書かれた机が。


──うわぁ……