思いきり間合いを詰め、
拳を伸ばっ……
「っ……!?」
バランスを崩しかけたのに、あえてそれを利用し仰け反りながら打ち上げるように蹴りが顔に。
カサッ!と避けながらガードした制服の袖を半端ない速さの蹴りがかすっていった。
「よっと……んー……無傷か」
着地する比江島くんは、私を見るなりぼそぼそと一人何かをつぶやき出す。
……正直、今のはヒヤッとした。
蹴り上げる最中、かすかに見えた比江島くんの顔は、リアルに敵を倒すような……そんな顔だった。
それをのぞんであおったのは私だけど、自分が予想していたより遥かに──強い。
あんな蹴り、避けてなかったら顔面直撃。
やってくれるじゃない。
"……やっぱ避けるよな。ならもう少し角度をつけるか?死角ついてもすんでで避けそうだし
……んー"
ブツブツと未だつぶやき、あーでもないこーでもないと私を見て何かを模索しだしている。
これが、本気の喧嘩の比江島くん……
すごく、
楽しそう。



