梅木くんのテキトーな"れでぃーFIGHT!"の合図で、勝負開始。
が、全然何も仕掛けてこない比江島くん。
それどころか、棒立ちのまま動こうとしない。
……要は私が行かない限り動く気はない、と。
「ねぇ比江島くん。私言ったよね?」
手抜いたら……って。
「い、いやぁ、分かってるけど……」
まるで旧比江島くんじゃない。すごくへっぴり腰になってる。
「りんりんれっつらごー!」
そうね、そうした方がいい。
「っえ、ちょ……!!」
私が一直線に走り出せば、比江島くんはジタバタし始め、ファイティングポーズに。
そうそう、そうでないと。
「ねっ!!」
勢いのままに蹴りをかましても、
「っぶなぁ……」
やはりこの動きは総長としての比江島くんだ。
初めての人相手に手合わせでこんな思いきりいったことはないのに、コマ送りで見えてんのかって思うくらい、無駄なく避けられた。
……これは、面白い。
「ちょっと凛!なにニヤニヤしてんの!?」



