ダボダボの袖で口元を押さえ、梅木くんは松野くんを叩く。
「だってだって!仮ってことは、りんりんの本当の彼氏じゃないんだよ!?」
「……っく」
またもダメージを受ける比江島くん。
「そう言われると確かにそうだよね。ということは……あれ?」
竹森くんははしゃぐ梅木くんの言葉に頷き、何かに気付いた。でも松野くんはなにも察せず苛立ちを見せる。
「なんなんだよ」
眉を寄せる松野くんに、梅木くんはよりはしゃぎながら告げる。
「島くんが!本当の彼氏じゃないなら!絶賛片思い進行形のマツくんにも、もちろんぼくたちにもチャンスとーらい!ってこと!!」
分かる!?と、梅木くんは目を輝かせ松野くんに詰め寄る。梅木くんの顔を押し返す松野くんは、目を見開くも立ち上がった。
「……ッバカかよ。俺らが三人居て一度負けてんだぞ。っと、あれからそう長く日は経ってねぇんだ、勝算ねぇだろ」
至ってクールを装っているのかもしれないけど、ドアにたどり着くまで何度も足がもつれる松野くん。



