「あーあー、私に勝てないとおじいちゃんもお父さんも私たちのこと認めないかもなぁ」
我ながらわざとらしい。だけど、案外効果があったり──
「マジで……?」
ほら。
畳みかけてやる。
「そうそう、だから一回くらいは"本気"の比江島くんを見たいなって。……そしたら、彼氏仮の仮、外してあげる」
「マジか……」
「大マジよ」
でもなぁ、と悩み出す比江島くん。
目を細めながら返答を待てば、暫く葛藤したのち……
「……分かった」
絞り出すようにか細い声で了承した。
「やった」
「おいおい……彼氏仮と殴り合いするっていうのに喜ぶのってどうなのさ」
「仮だもの。仮を取りたければ本気で来て。手抜いたって分かったら……分かるよね?」
「え"……」
黒笑を浮かべる私に、比江島くんは冷や汗を滲ませた。



