たい焼きを食べながら、おいかけっこするように私たちは寮へ戻った──


「んで、依頼主から仮でも彼氏にぐんと昇格した。なのに……これ、このままなの?」

部屋に着くなり、これ、と部屋を仕切る線をさす比江島くんに私は迷いなく頷く。

「当然」

「ちぇ、残念。でもま、これからは俺らしく凛といるから、よろしく」

「わ、私も多少は素直になる努力をしようと思う……」

「俺としてはそのままでもいんだけどね。ツンツンが凛って感じだし。デレは俺が引き出すから」

「引き出すってどうやって?」

尋ねれば、比江島くんは目を丸くした。
だけどすぐ、私の手を取り薄く笑みを浮かべる。

「こうやって……」

そのまま引き寄せられ、頬に当たった感触に思いきり肩が跳ねた。


「い、いい今っ……!?」

頬に……き──キス……!?

「はははっ、動揺すごいな。わりと照れ屋なの自分で気づいてないでしょ?赤いよ?」

「うるさ……ちょっと、びっくりしただけだもん」

「ははっ可愛い」

「可愛くないし」

ふいっと顔をそむければ、比江島くんが顔を寄せてきた。

「──もっかいする?」

「なっ……!」

なんか、この比江島くんに振り回され過ぎ。鵜呑みにしちゃだめよ、凛。

あぁ、もう顔あっついし。

「い、いらない」

「いらないって……ははっ本当ツンデレ」

楽しそうに笑う比江島くん。
本当勝てる気しないんだけど。

「でもそんな余裕も今のうち。明日は覚悟しといた方がいいよ」

「明日?なんかあったっけ?」

「お疲れパーティー。お重3個になってるかも」

「あ……」


ほらねやっぱり、忘れてたでしょ?


「ま……まあ、お重もだけど、仮をとれるよう、強瀾のたて直しと一緒に頑張りますかね。俺の彼女さん?」

「うん……だからこれからも」


どうぞよろしく──




私たちはそっと額を合わせ、笑いあった──