──そして、特に行くあてのないデートは……ぶらぶらと歩きながら、話をしよう、とのことに。
最初はヨイヤミの話とか、計画関連の話をしてたけど、
「俺の家は木造でまぁまぁ広くて、元はちょっとヤバめの家系。理系より文系。してた眼鏡は伊達で視力はいい。頭はさほどよくはないけど。その分運動はできる。血は苦手。身長は──」
「ねぇ、もしかして、自分のこと全部話そうとしてる?」
徐々に、比江島くん自身の話だけに切り替わっていて。
「だめ?」
「そうじゃないけど」
「今までの比江島くん像を上書きしようと思ってさ」
上書きもなにも、別人にしか見えないんだけどね。
「それに、俺を知って欲しいから」
「そ、そう」
卒業まで1年以上はあるんだから、知ってるにこしたことないけど……いまいち頭に入ってこない。依頼は終わったのに。
「もしかして、元の比江島くんの方が好き?」
「いや……今思うと、演技力凄まじいなって」
泣きそうな顔とか、情けないとことか。
強瀾として一緒にいた、竹森くんにも同じことを思うけど。
「ははっ、それは本人になりきってたから。それにオーバーにやっとけば、あちら側もなめてかかってくると思って」
「今は、その男の子どうしてるの?」
「別の学校に通ってるよ。もう大丈夫って話もしたし」
……そっか。それなら良かった。
安心して、生活出来てるなら。



