尋ねるとすぐ、比江島くんはぼそっとお願いを言ったが──私に届いた言葉は、聞き間違いかもしれなくて。
「ご、ごめん、もう一度言ってもらえる?」
「……デート、しよ」
「デート?」
「うん」
どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。
「ちなみに……なんで?」
「……バタバタしてたし、息抜きもしたいしゆっくり話もしたくて」
息抜き……
確かに、ずっと気を張ってたし──
いつもの私なら、イヤ!って言うはずが、
「い、いいよ」
私は頷いてしまった。
「あれ、意外。すんなりだ」
「意外って──」
「あーはい!お願いします!まだ早いから食堂で仮眠とって、着替えて、今の服洗濯機にぶちこんでから部屋くるから。じゃ後でな」
「ちょっ」
引き留める間もなく、比江島くんは部屋をあとにした。
つい……オッケーしてしまったけど、
「……何着たらいいの?」
したことないし、デートなんて!
それから私は、早朝だというのに服をあさりだした──



