わけありくんを護ります

私の手を握る力が強まり、顔を上げれば比江島くんと目があってしまった。

「俺──」


『凛ちゃんたちー!ご飯だよ!下りといでー!』

比江島くんの言葉を乙女子さんの声が(さえぎ)る。

「……な、なに」

「あー……いや、今はやっぱ大丈夫」

一応聞こうと思ったけど、比江島くんはどこか落ち込んだ様子で自身の手で顔をおおった。


この後──比江島くんと晩御飯を一緒に食べる、って約束を達成。
2人してぎこちない感じだったけど。

乙女子さんに、ケンカでもしたのかって聞かれて、違うのに少し困っちゃった。
そう見えてるのかなって思ったから。

だから、ご飯の後はなるべくいつも通りでいようと思ったのに、比江島くんは『先に部屋に戻ってて』と私に言ったきり、


この日、部屋に戻ってこなかった。