「え、ちょ待て……比江島、お前」
「ぼくらをボコスカしたあの時、暗くて帽子とマスクしてたから顔も名前も分からなかったけど、島くんだったの……?」
2人も混乱中。というか名前も顔も知らなかったって……
「まあ訳は後で話すから。今は……よっと」
「わっ」
比江島くんは私を横抱きにして立ち上がると、奥から誰かが入ってきた。
「お、きたきた。警察と……」
「げ!!」
ぞろぞろと警官が入ってくる中、その中心によく知る顔が──
「げ、とはなんだ。娘が父親に向かって」
「ははは!元気にしとるわ。流石ワシの孫娘。頑丈に出来ておるわい」
ますます意味不明になってきたぞ……
「全く、父に依頼中の報告をせず乗り込んでるとはな……柚希くんから連絡をもらってなかったと思うと──」
「したってば、しかも2人に。人の話聞かなかったのはそっちだからね」
「え、ワシにも?」
「うん。おじいちゃんも」
「マジか」
「マジだから」
むつけてにらんでやれば、2人ともわかりやすく目をそらす。
こういうとこ、似てるんだから。
「ま、まぁ無事ならいい。柚希くんもだ。ありがとう」
「いえ、でも自分と逆なタイプになりきるのは、肩がこりました」
「ははは、君ならやってくれると思っていたよ。それで、すぐで申し訳ないんだが柚希くん、詳細は車の中でしようか」
「分かりました。行こ、凛」
凛──



