鶴谷の声で、5人全員か動き出す。
でも1分もしないうちに、私が亀井から間合いを取った瞬間、2人が私の視界に倒れ込んできて──
「あーあもう、全然つまらないなぁ」
2人がかりでも鶴谷相手は厳し──
「よそ見ですか」
「……っ!!」
真正面から蹴られ、ガードしたものの力の差でよろめき、その間に亀井から間合いをつめられてしまった。
「芝桜──!!」
ガードに片手だけ前に出すも、射程の長い足は目前に迫っていた。
折れるっ──!
一瞬で利き手でガードしたのを悔いるも遅い。むかえるであろう痛みに備えた。
「女がここで何してんの?……なんつってな」
え──
頭上からの声がした時には、すでに亀井は倒れていた。
「総長だぁ!」
「おせぇんだよ……」
え、総長?……ちょっと待ってよ。
一瞬にして亀井がやられたこともそうだけど、総長って言われたこの人──
「おやキミが総長くん?待ちかねたよ。名前を聞いてもいいかな」
つまらなそうにしていた鶴谷が、目を輝かせる。
「強瀾中、総長──比江島柚希」
何、してるの……
フードを外し、比江島柚希と名乗る男の子。私が探してたフードくんと同じ……
「ちょ、松野くん、これはどういう」
聞こうとしたのに、総長が来て喜んでた2人も、なぜか驚いていて……何がどうなってるの?
わけわからない状況に頭が追いつかず、向かい合う総長同士を傍観することしかできなくなった。
「本当はまだ、強く頼れる俺のボディーガードさんの姿を見てたいんだけど……キズモノにされたくないんでね。側近は片付いたから、総長同士でやろうか。鶴谷くん」
「……喜んで」



