「俺らはともかく、芝桜。お前は準備できてんのか?今更、ビビってねぇだろうな」
劇場への扉に手をかけたところで、松野くんが私に振り返る。
本当に今更な質問すぎる。
「誰に言ってるの?余裕だってば」
松野くん風に答えて見せれば、松野くんは嬉しそうに口角を上げた。
「……最高の返事じゃねぇの」
フッと笑い合い、重めの扉の向こうへ、私たちは足を踏み入れた──
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荒れた受付を抜けて、
ステージへつながるもうひとつの扉もためらいなくあけて進む。
中に入れば、ヨイヤミの皆さんは薄暗いステージ上にいて、こちらを見据えていた。
劇場とはいっても席も段差もない。閑散としてそこまで広くないし、ステージだけが残った倉庫みたいな印象だ。



