それと同時に後ろから木製のバッドが振り下ろされ、手のひらでつかみ受け止める。
きゃー!と悲鳴が上がり、近隣の人たちは走って逃げていった。
「っ!!」
コイツ……バッド全体と先端、けずってとがらせてるっ──
私が受け止めたことに、振りかざしてきた男の子はニヤリと笑う。
「このっ……!!」
バッドを握ったまま引き寄せ、アゴに膝をぶつけ、みぞおちを蹴り飛ばしてやった。
でも……立ち上がる男の子。
その表情は獲物を見つけたケモノのよう。
なるほど……これが、比江島柚希くんを追う──【ヨイヤミ】か。
バットを引きずり走ってくる。
私との間をつめれば、バットを高々と上げ、叩きつけるモーションに入った。
「オラァ……!!」
後ろから、気の抜けるような聞きなれた『ひゃ』って声がした。
何、私がやられると思ってるの?
──そんなわけ、ないでしょ!
ガインッ!!
「……なにっ!?」
男の子が叩きつけたのは私の学ラン。
学ランをフェイクにして、私は顔面に拳をめり込ませた。
「っぶ!!」
白目になり倒れた男の子の手から、からん……と木製のバットが転がった。



