──たい焼き屋に着いて、表に書いてあるメニューに目を通していく。
「王道にあんこ……新作のホイップ入りもすてがたいなぁ」
そう言えば、乙女子さんと喜八さんは梅木くんのマフィンを絶賛してたけど……
比江島くんは結局、この間のマフィンでおせちの時と同じ過ちをおかしたのに、甘いものがうけつけるなんて……
「凛さんはなにがいいですか?」
「そうだなぁ……」
カスタードもおいしそうだし、比江島くんの言うとおり、新作もおいしそう。
あ、チョコもある。しかも新作より安い。
「私はチョコにする」
「チョコですね。なら俺は……新作のやつにします!じゃ、ちょっと買ってきますね」
「うん」
注文をしてお会計をする比江島くんの少し後ろで待っていると、この短い距離を走って来た。
「はい、どうぞ。熱いので気を付けて食べてくださいね」
「ありがと」
差し出されたチョコ味のたい焼きを受け取る。
「ベンチ……はないんだ。歩きながら食べますか?それともどこか座れるところを……っのわ!?」
私はキョロキョロとしていた比江島くんを横から押した。
「凛さっ──」
不意に押したせいで、比江島くんのバランスをくずさせてしまったけど。



