イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


「じゃあ気を取り直して、バイト内容だな」


 あ、そうだ。バイトだ。了承してしまったけれどちゃんとバイト内容を聞かないと。

 月給がこんな金額なんだから、重要な内容なのかな。


「恋人役を勤める事」

「……パパ活?」

「はぁ? そんなふざけたバイト内容じゃないに決まってるだろ」


 恋人役? この時給で?


「誰の恋人役をすればいいんですか?」

「俺の」

「……」

「最近周りがうるさくてな。同僚にはそれくらい作れと言われるわ、女性には言い寄られるわ、飲み会には連れていかれるわ、上司には見合い話や娘を紹介されるわで困っているんだ」

「……大変ですね」

「そう思うなら助けてくれ。金はきっちり払ってやる」


 マジか。こんな私にまで助けを求めてくるとは、相当なんだろうな。


「正直に言うと、今日はお見合いの予定があったからあのクソジジイとの飲み会に行かずに済んだんだ。娘を連れてくると言っていたからだいぶ助かった。それに下戸だってのにあの上司はいつも酒を飲ませにくるから困っていたんだ。だから、お前には感謝してるんだよ」

「はぁ……」

「だが、その救世主が大体20代くらいの若い女性なのに結構な金欠ときた。同情くらいするだろ。まぁ、それは職業柄もあるけどな。だから、この話を出したんだ」


 ……やばいな、それは。遠い目してるし。でも、クソジジイ……?

 というか、助かった、と言ってもそれはこのお見合いを持ってきた琳のお父様に感謝するべきでは? 私じゃないよね、それ。


「それに、大金で困っていて追い詰められている奴ほど扱いやすい人間はいない」

「……」


 あぁ、それが本音か。なるほど、確かに大金で困っているな。

 なるほど。裏がある、というのはこういう事か。……いや、合ってるのか?