……はぁ、自分は何を考えているのやら。仕事中でしょ。
そう自分に言い聞かせつつ、今日もカウンターで止まっていた手を動かした。はぁ、まだ覚えたてなんだからちゃんと集中して仕事覚えなきゃ。
「あれ? 瑠奈ちゃん?」
「え?」
けれど、その時。聞き慣れた声が私を呼んだ。視線を向けると……知っている男性がこちらを見て手を振ってきた。
「佐々木先輩……!?」
以前のアルバイト先だった居酒屋で働いていた、佐々木先輩だ。彼は、カウンター席の私の目に前に座ってニコニコと見てきた。
ま、さか……元アルバイト先の先輩が来るとは……困ったな。
「へぇ~、辞めちゃったって聞いたんだけど、ここで働いてたんだ」
「あ、はい、まぁ……」
……すっごく、気まずい。
とはいえ、佐々木先輩とはあまり深くプライベートの話をした事はないし優しい一面もあるから……大丈夫、かな?
相変わらず、先輩はおっとりした様子でメニューを眺めていた。失礼ではあるけれど、どこか抜けているというか、天然なんだけど、とても器用で教え上手な先輩だった。ギャップ、ってやつ?
「こんなおしゃれなカフェがあったんだねぇ。どれも美味しそうだな~。あ、パフェでも頼んじゃおっかな」
「パフェ、ですか」
「変なこと思った? スイーツ男子って事にしておいてね」
「……あ、ははっ、はい、そういう事にしておきます」
うん、やっぱりいつもの佐々木先輩だ。



