イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 瑠奈の事が好きなんだ。

 改めてそう言われてしまうと、余計恥ずかしくなり視線を横に向けてしまう。心臓が、彼に聞こえてしまうくらいに煩い。こんなにバクバク脈打つ心臓は、先ほど恐怖を感じていた時にもあったけれど、それとは全く違う。


「あっ……えぇと……終わりっ!!」


 この恥ずかしさに耐えられなくなり、彼の両肩を掴み押しのけた。初めての事で、もう何が何だか分からない。

 そんな私の行動に、クスクス笑う彼を睨みつけたけれど……ただ楽しそうな彼は怖くもないと言っているように見える。そして、ようやく運転席に戻ってくれた。

 パックルから手を離してくれたから、シートベルトを外して逃げられるのだが……不覚にも帰る気になれなかった。


「少しは考えてくれたか?」

「……」

「その顔なら、期待してもよさそうだな」


 今の私の顔は、だいぶ火照ってしまっていた。隠すように顔で覆うけれど、耳まで熱くなっているから、きっと真っ赤になっている。

 こんな事になるなんて、誰が予測出来ただろうか。そもそも、最初から私の事を知っていた事すら気付かなかった。


「じゃあ、次に会う時聞いてもいいか」

「う……」

「約束」


 と、頭を撫でてきた。何度もつないだことのある、大きくて温かい手だ。

 心臓が、煩い。

 じゃあ、おやすみなさい。と逃げるように助手席から出た。おやすみ、と彼の声が聞こえたけれど……そのせいでまた胸が高鳴ってしまった。

 次に会う時。

 その時までに、考えないといけない。

 いや、考えなくても分かる。薄々は気付いていたけれど、それを言葉にしてしまうと彼に迷惑がかかるからと、蓋をしていた。

 けれど、言えるだろうか。

 心の弱っちい私の、この口で……何度も助けてくれたヒーローに、伝えられるだろうか。