あれから、借金を全て支払うことが出来た。本当は自分で何とかしたいところではあったけれど……口出しはしないほうがいい、もう会いたくないと思ってそうした。
借金返済の手続きなどはあちらがしたかったらしいけれど、再婚相手の彼女伝いで送られてきたメッセージは全て無視した。
あれから母親が家に帰ってくることはなかったけれど、これからの事を考え安めではあるけれど金庫を買った。まぁ、言い合いにはなるだろうけれどこちらには警察の恋人がいると思い込んでいるのだから大丈夫だと思う。
警察官、の名前を出してあんなに慌てていたのだから、きっと何か後ろめたい事でもあったのだろう。変な事をしていないといいけれど。巻き込まれるのはもうごめんだ。
「サンドウィッチと、ブラックコーヒーを一つずつ」
「かしこまりました」
あの後、居酒屋のアルバイトはやめてしまった。警察の方々と顔を合わせるのが気まずくなってしまうし、それに湊さんにとってもあまりよくないと思った。
代わりに、違うアルバイトを見つけて合計2つのアルバイトをしている。借金は返済出来ても、生活というものがあるのだから安心していられない。
居酒屋の代わりに選んだのは、とあるカフェ。接客の方を担当させてもらっている。とても働きやすいし、先輩方も、来店されるお客様もとても優しい人ばかり。
けれど、いつも言われる。疲れた顔をしているね、と。自分としては疲れているようには感じないのだけれど、恐らくその原因は……この前の父親達と会った時の事、そして湊さんの事を考えるとため息が出てしまうから。
元父親とはもう会う事はない。そして、湊さんとはもうアルバイト期間が終了したのだから、私は関わらないほうがいい。けれど……ふと思い出してしまう。
『だから、無理に笑うな』
あの時の記憶が、何度も何度も脳内に映し出される。頼っていい、利用していい、だから……彼の前では無理するな。
そんな言葉をもらってしまったら、勘違いをしたくなってしまう。



