私はあの時中学生。彼は仕事のせいで家に帰るのが遅かった。だから母との間にあった事はあまりよく知らない。
知っているとすれば、何度もしてきた母の浮気と、浮気相手の一人が弁護士だという事。そして何度も二人は言い争いをしていた事だけ。
なら、たとえ二人の娘であっても、口を出すところじゃない。
「分かり、ました……」
「そうか。支払いについては私の方で対応しよう」
「……いえ、私で何とかします」
けれど、どうしてだろう。
「いや、戸籍上は家族でなくても血は繋がっている。私達の問題だったのだから、これくらいはやらせてくれ」
「……」
血の繋がっている元家族、元両親のはずなのに……孤独に感じるのは。
このカフェの空調がおかしいのか、何となく寒気を感じる。
「……確か、今は大学生だったか。ハタチの」
「……はい」
「そうか……大人になったな」
中学の頃から別れたから、あれから8年。中学の頃の私しか知らない彼なら、ここまで成長した私に新鮮さを感じていると思う。けれど、今、私を見てどう思っているのだろう。隣にいる彼女も、今どう思っているのだろう。
「……お前は、母親の事をどう思っている?」
そんな元父親の声に、目を見張った。どうして、そんな事を聞いてくるのだろうか。
「今まで大変だっただろう。大学生だというのにあいつの酒代まで稼いで、最後には借金まで背負わせるとは……こんな事になるなら、私がもっと早く動くべきだったと後悔している。だが、これは全てたらればだ」
「……」
一体、この人は何を言っているのだろうか。
「今更父親面をするつもりはない。だが、血の繋がった娘が私達の問題のせいで負担を背負わされてしまうのは黙っていられない。どうだ、母親と縁を切ってこちらの家庭に入るのは」
……は?
家庭に、入る……?
それって、どういう事?



