私はとあるカフェに来ていた。今の私は、爆発寸前。この怒りをどうする事も出来ないけれど、自分は大人だから爆発させないよう必死でもある。
けれど、これは怒りたくもなる。
「佐藤さん、これ、どういう事ですか」
「えぇと、それは、正弘さんが……」
「知ってます。名前書いてあったので」
サトウマサヒロ。私の通帳に、私が抱えている借金と同額のお金を振り込んだ相手の名前にそう書いてあった。まごうことなく、これは元父親が振り込んだものだ。
どうして、借金の事を知っていたのか。それは恐らく早瀬さんが彼女に話したからだ。なら、どうして私の通帳の口座番号を知っているのだろうか。
目の前の席に座る元父親の再婚相手の彼女は、少し焦っているように見える。それは、私が怒っているからなのか。それとも……
「え……」
その時だった。彼女の視線が、私から右に移動した。そして……
「これは私のけじめだ」
聞き覚えのある声が、耳に入ってきた。この声は、小さい頃からずっと聞いてきた、そして中学の頃から全く耳にしなかった声。
見るまでもない。……私の元父親の声。
彼は、私の隣に立つと目の前にとあるものを置いた。見覚えのある……私の口座のキャッシュカード。
そして、彼は彼女の隣に座った。歳はとったけれど、変わらない。私とそっくりな顔をしている、私の元父親。
「これは、もっと早くけじめを付けなかった私の責任だ。そして、私のふがいなさでお前に無理をさせてしまった事への謝罪でもある」
……けじめ? ふがいなさ? 謝罪?
一体、この人は何を言っているのだろうか。
「私とあいつの問題に、お前を巻き込んだ。その謝罪だ」
「……」
はは……本当に、変わらない。
これを持っている、という事は……母と会ったという事。一体どんな話をしたのだろうか。きっと、母は怒ったでしょうね。だって、このカードは私が返してと言っても絶対に出さなかったものだから。



