イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


「それは誰が決めたんだ」

「えっ」

「今、言ったよな。自分の人生は自分のものだって。なら、自分の人生の中で関わりたい人物も、自分が決めていいって事だろ」


 確かに、そうだ。そういう事に、なる。


「なら、俺はお前と関わりたい。そう思うのは、許されない事か? それとも、お前が嫌だと思ってるのか?」

「あ、いえ……でも、湊さんは警察官として頑張ってますし……」

「国民を守るのが俺達の仕事だろ。その国民と関わっちゃいけないって誰が決めたんだ」

「……でも」

「でも?」

「……私、湊さんに、警察、やめるって、例えでも、言わせちゃった、から……」

「……それは、お前が言わせたわけじゃない。確かにあれは例えだ。だが、萩本警視長への脅しで言っただけであって、俺が警察官を辞めることはあり得ない」


 でも、辞めさせられちゃうんじゃ。と、言おうとしたけれど遮られた。

 頬に、彼の大きな手が添えられる。


「守りたい存在が、出来たから」

「えっ……」

「今までは、この日本を、国民を守りたい。そう志していたが……一番に守りたい存在が出来た」


 親指で、頬を撫でてくる。その部分が、とても熱く感じた。

 湊さんの、私を見つめる視線が、柔らかかった。先ほどまでの、冷たい視線なんて、どこにもない。


「警察官をやっていてよかった、と思った。守りたくても、守れる力がなければ、ただ何も出来ず見ている事しか出来ないから。さっきも、警察官じゃなければあのナイフで殺されていた」

「……」


 そうだ。私は、ナイフが出てくるなんて微塵も思っていなかった。もし、警察官じゃない湊さんに助けを求めていたら、今は救急車で病院まで連れていかれていたところだ。

 彼が警察官だったから、今は何事もなくここにいる。