イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


「次。萩本警視長に何を言われた」

「……」

「金をやるから身を退けと言われたのか」

「……おっしゃる通りでございます」

「だろうな。あのカードがあれば誰でも分かる。で? それを聞いて、はい分かりましたとでも答えたのか?」

「……いえ」

「じゃあなんて?」

「……本人から聞くまで、私は何もしません、とお答えしました……」


 断った事に、警視長さんはだいぶお怒りだったから、今更ではあるけれど大丈夫だったのかとだいぶ不安ではある。他にもだいぶ煽りまくったし。けれど、それは言わないでおこう。あとが怖い。怖いもの知らず、とでも言われそうだし。


「本人から聞くまで、ね……」


 そう呟く湊さんは……冷ややかな目でこちらを見てくる。何か気に障ったようだ。一体何が不味かったのだろうか。


「他には?」

「えっ」

「言え」


 ……湊さんは、一体どこまで分かっているのだろうか。さすが、エリート警視。きっと刑事の時もだいぶ活躍したんだろうなぁ。


「……湊さんは、その歳でエリート警視だから、逸材で、私はただの一般人だから……それぞれ見合った相手の方がいい、と……あっ、私としては、自分で選ぶ権利はあると思ってますっ!!」


 湊さんの視線に何故か寒気を感じるのはどうしてだろうか。これでは家に帰してもらえるのはもっと遅くなってしまいそうだ。もう目の前にあるのにぃ……


「その、自分の人生は自分のものですから……でも、他人の人生を邪魔するのは間違ってるとも思ってます。その人が輝ける未来を邪魔するのは……私も、嫌です。だから……」

「俺の人生にお前は邪魔だと、そう言いたいのか」


 改めてそうはっきり言われると、何故か悲しくなってしまう。ただのアルバイトだったはずなのに。けれど、自分が一般人だという事は変えられない事実だ。私のせいで、彼が警察をやめてしまうのは間違ってる。