イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。


 カフェを一緒に出ると、来た時に乗った湊さんの車に。タクシーで帰ります、とは言わせないとでも言いたげに半強制的に助手席に乗せられた。


「シートベルト」

「……はい」


 ……警察官にそれを言われたら、するしかない。逮捕されたくないもん。

 自宅に送ってくれるらしく、エンジンがかけられた。けれど、車内は静かだった。

 きっと、気を遣ってさっきの事は触れないと思ってくれてるんだと思う。そういうところが、本当に優しい。

 私としても、色々とありすぎて頭がこんがらがってる。いきなり母と再会し、そして元父親の今の奥さんとも再会し私に用があるようだった。

 一体、どんな用件なんだろう。

 ……で。


「あの、ここで大丈夫ですけど……」

「ちゃんと玄関前まで送るのが普通だろ。ほら行くぞ」


 私の住むアパートの駐車場に着いたまではよかった。けれど、何故かエンジンを切って運転席から降りた湊さんは、同じく車から降りた私の手を握りアパートに向かって歩き出してしまった。

 今まで、玄関前まで送ってもらった事はなかった。それなのに、何故いきなり?

 まぁでも、玄関までだし……と、二階に上がる階段を一緒にのぼり、私の家の玄関まで辿り着いた。けれど、足を止めては鍵をバッグから探す私を見つめている。

 私が玄関に入ってから帰るつもりなのかな、と思い玄関を開けたその時だった。湊さんが、いきなり家に入ってはつかつかと廊下を早歩きで進んでいってしまった。私も焦って入ろうとした、けれど……見てしまった。


「どなたですか」


 玄関にあった、女物のヒールの高い靴を。

 焦りつつも靴を脱いで廊下を走り、湊さんの隣に立った。部屋の中にいたのは……さっき会った、母親。


「あ、あら、瑠奈……早かったわね」


 どうして、彼女の手に……湊さんから貰った、ネックレスが?


「それ、俺が瑠奈にプレゼントしたネックレスですけど。どうなさるおつもりだったんです?」

「っ!? あ、あら、あなたもしかして瑠奈の恋人かしら!」


 そう言いつつ、私達の方に笑顔で駆け寄ってきた。手にあったネックレスは、近くの棚に自然に置いていた。都合の悪い事になると話を逸らすその癖は、前と変わらない。

 そう、変わらない。全然。

 母親と会うのは大体3ヶ月ぶりだから、そんなに久しぶりというわけではない。


「恋人が出来たなら早く母の私に紹介してちょうだいよ。水臭いわね」


 けれど……借金を押し付けた事への罪悪感くらいはほしかった。


「ねぇ、お母さん」

「ん? なぁに?」

「お母さんは、私の事自分の娘って思った事、あった……?」

「ぇ……」